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福岡高等裁判所 昭和56年(ラ)90号 決定

抗告人 山田治

主文

原審判を取消し、本件を福岡家庭裁判所八女支部に差戻す。

理由

一  抗告人は、主文同旨の裁判を求め、その抗告理由は、「本件は、親権者と定められた母が死亡したため生存する父が親権者の変更を求めたものであるが、民法八三八条一項に基づいて既に後見人が選任されておればともかく、いまだその手続がされていないのであるから、抗告人の申立は認められてしかるべきであるのに、これを却下した原審判は法の解釈を誤つた違法のものである。」というにある。

二  案ずるに、本件記録によれば、抗告人は、昭和五五年一二月三日、妻久子との間の長女文子(昭和三九年一月一六日生)次女京子(昭和四三年六月二三日生)の親権者を久子と定めて、同女と調停離婚したが、同女が昭和五六年三月一五日交通事故で死亡したので、同年四月一四日以来右未成年者両名を引取つて養育監護すると共に、本件申立に及んだことが認められるほか、本件に関し、民法八三八条一項に基づく後見人選任の手続はとられてないことが窺われるところ、右事実関係のもとにおいては、右未成年者の親権者の変更を求める抗告人の本件申立は、ほかに特段の事情のない限り相当としてこれを許容すべきである。

よつて、本件申立を不適法として却下した原審判を取消し、家事審判規則一九条一項により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松村利智 裁判官 金澤英一 寒竹剛)

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